東京2020オリンピック非公式種目!?ピントレーディング

2019年3月8日現在、東京2020オリンピック開幕式まであと504日。徐々に盛り上がりを見せていますが、関心の的は公式競技だけに限りません。私たちバッジ専門店も大いに関わりのあるピンバッジが“熱い!”のをご存知でしょうか。実はオリンピックとは長くて深いお付き合いのピンバッジ。注目のピンバッジ・オリンピックイベントをご紹介します。

「ピントレーディング」の世界

ピンズ、バッジなどとも呼ばれるピンバッジ。社章や校章、議員バッジなどのような身分や資格、所属団体などを表す「徽章(きしょう)」としての役割を持つ場合と、記念品やノベルティ、キャラクターアイテムなど「装飾系グッズ」として括られる場合とで、大きく2つにジャンル分けされています。後者は、コレクターズアイテムとして絶大な人気を誇る分野でもあります。今回は、この収集されるピンバッジにフォーカスしています。

さて収集すると一口にいっても、ピンバッジであれなんでもいいというわけではなく、やはり、そこはコレクター。いわゆる“オタク”なので、こだわりがあります。例えば、ディズニー系や特定のアニメキャラ、ハードロックカフェなど、あるカテゴリーやテーマに沿って集めるわけです。

「オリンピック」も人気カテゴリーの一つです。来たる東京2020オリンピックを見据えて、すでにさまざまなオリンピック限定記念ピンバッジが出回っていることからも、需要の高さが伺えます。記念ピンバッジはネット購入できるものから、「非売品」「希少」なんていうコレクター魂を刺激するバッジも多数あるので、集めている方たちは俄然、盛り上がるようです。みなさん、あの手、この手で集めるようですが、「ピントレーディング」といって「バッジを交換し合う」という入手方法もポピュラーな手段なんだとか。ネット上でも売買・交換されていますが、実際にオリンピック開催地で行われるピントレーディングは、世界中のバッジコレクターが集まる一大イベントとなっています。

近代オリンピックの幕開けとともに

そもそもオリンピックバッジは、近代オリンピックとして開催された第1回アテネ大会(1896年)で作られた、選手、大会役員、報道関係者などの識別用バッジから始まります。当時すでに選手たちは、友好の証として、厚紙で作られた円形のバッジを交換したそうです。まだ私たちが頭に浮かべるピンバッジとは様相が違いますが、これをきっかけに根づいた文化が「ピントレーディング」だといわれています。

一般客の間で記念ピンバッジが交換される「ピントレーディング」が広まったのは、1980年台に入ってからになります。転機は、放映権料やスポンサーの協賛金を収益の柱とした商業五輪のさきがけ、第23回ロサンゼルス大会(1984年)です。スポンサーメリットを巡って激しい競争が繰り広げられたため、扱いやすいコンパクトさながら、見栄えがよく、メッセージ性を込めやすいピンバッジが格好の宣伝ツールとなったのです。さまざまなオリンピック記念バッジが作られるようになり、「副産物」としてのピンバッジは飛躍的に増えていきました。比例するように、オリンピック・ピンバッジ収集を楽しむコレクターもまた多く出現しています。

増え続けるオリンピック記念バッジ

オリンピックの宣伝ツール・公式グッズとして定着したピンバッジは、回を重ねるごとに増え続けています。主催者(国際オリンピック委員会:IOCおよび大会組織委員会)バッジを始め、国内オリンピック委員会(NOC)、スポンサー企業、テレビ・ラジオ・新聞・通信社などのメディア、IOC認可によるオフィシャルライセンスものなど、そのバリエーションも豊かです。

いち早くオリンピックにおけるバッジ宣伝力に目をつけたコカ・コーラ社は、カルガリー冬季大会(1988年)以降、継続してIOC公認「コカ・コーラ ピントレーディングセンター」を開設しています。日本国内におけるピンバッジ人気に火をつけたといわれる長野冬季大会(1998年)では、長野駅前の同センターに早朝から深夜までピンバッジを求めて集まる人々の様子が全国的なニュースとして取り上げられるほどの人気施設に。なんと期間中、45万人が足を運んだとのことでした。コカ・コーラ社によると、東京2020も驚きのプログラムが練られているということなので、コレクターならずとも期待が高まりますね。

ピンバッジがきっかけで始まる交流

オリンピックの代表選手にならなくても(容易くなれるものではありませんからね……)、誰でもオリンピックに参加できるのがピントレーディングの魅力ともいわれます。ネックストラップなど相手から見えるところにピンバッジをつけておけば、ピントレーディング参加の表明。自然に交渉が始まります。ピンバッジをつけている方なら、思い切って声をかけて、交換を持ちかけてみるのもありなんです。

ピンバッジとピンバッジを交換するという、世界共通の認識があるからこそ成り立つピントレーディング。相手の言語が十分に理解できなくても、もちろん年齢が違っても、ピンバッジが「縁」を取り持ってくれます。そう考えるとピントレーディングには、単に目的のピンバッジを収集するだけでなく、人と人とが交流するためのコミュニケーション・ツールという役割も大きいといえます。もうすぐ東京にオリンピックがやってきます。ピンバッジをツールにして、さまざまな国の人たちと交流を楽しんでみませんか?